人とチンパンジーの違いが「想像力」に収斂していく著書ですが、途中、自閉症に話を絡めているのは少しステレオタイプかな、と思いました。社会に流布してる「偏見」のレベルですね。でも、松沢先生はチンパンジーを劣ってると思ってるわけじゃないし、心の理論仮説のプレマック先生を直接の恩師とする先生だから、単純な「自閉症の子は共感性が低い」という話ではありません。想像力は、人間が本来持つはずの適応力を放棄し、別の進化を辿り始める契機となったもの。トレードオフで獲得した能力なわけです。希望や絶望という、幻想の世界で人間は暮らしている。リアルを捨て、バーチャルに生きることを選んだのが人間という種族。その存在は不自然です。だから、自然を破壊することもできるし、知恵を使うことで自然と共存もできる。
でも人間のバーチャルさは、その限度を超えてしまったかも知れない。リアルさを失った。動物として息苦しい環境に自らを閉じ込めている。どの自閉症も、とは思わないけれど、再びリアルさに回帰しようとする傾向が人間に生まれつつあり、それが自閉症という形に現れてるのだとしたら、これは単純に「治療すれば済む話」ではない。
・・・実はアスペルガーもカナーも、第二次大戦中に「自閉症」を発見するんだよね。アスペルガーは、ナチスによって「浄化」されそうになっていた子供たちを守るために「この子たちは治療教育を受ければ治るんです」と言わざるを得なかった。そのために出てきた診断名なんだから、「社会の息苦しさ」と関連するのは、そもそもの初めから「当然」のことでした。